ヘバーデン結節

ヘバーデン結節って?

 指にある関節のうち、いちばん指先に近い関節が腫れて変形してしまう病気のことをヘバーデン結節といいます。どの指にも発生することがありますが、とくに人差し指に多いといわれています。

 骨と骨が連結している部分が「関節」ですが、かたい骨と骨がぶつかり合うと痛いので、骨の関節側の表面には軟骨があり、関節がなめらかに曲げ伸ばしできるようになっています。ところが、指の使い過ぎなどの影響で軟骨がすり減ってしまうと、関節に新しい骨を増やす反応が起こります。その結果、指をスムーズに曲げ伸ばししにくくなったり、指の関節が腫れてきたりします。

 85歳までに女性の約半数、男性の4人に1人が手指の関節変形を発症するといわれています。ヘバーデン結節はその中でも最も多い疾患の一つで、とくに中年以降の女性に多く発症します。ほとんどの方は仕事や家事などで日常的に指を使うため、指の痛みや曲げにくさといった症状が強いと日常生活に支障をきたしやすい疾患といえます。

 原因は不明とされていますが、指の使い過ぎが関係するという報告もあります。また、変形性膝関節症のある方の60%以上にヘバーデン結節がみられるという報告もあり、関節症や関節変形を起こしやすい体質が隠れている可能性があります。

 なお、ヘバーデン結節のとなりの関節が変形して腫れてしまう疾患は「ブシャール結節」と呼ばれています。頻度はヘバーデン結節よりも少ないですが、遺伝が関係することも多く、この場所の関節の腫れや痛みはリウマチなどの疾患が隠れている可能性がありますので、一度検査をおすすめします。

ヘバーデン結節は痛くなければ放っておいても大丈夫?

 急いで治療する必要はないかもしれませんが、生活習慣を見直していただいたほうがいいかもしれません。痛みがそれほどなくても関節が腫れているということは、軟骨のすり減りや関節の変形がすでに起こっているということです。指の関節に負担がかかる作業を続けていると、軟骨のすり減りや関節の変形が少しずつ進んでしまいます。その結果、指の痛みや使いにくいさがひどくなってしまい、具体的にはペットボトルのふたを開けたり、シャツのボタンを留めたりといった動作がしにくくなってきます。痛みがなくても、指の使いにくさがあれば治療を考えていいタイミングです。

ヘバーデン結節の治療は?

 安静、テーピングや装具、リハビリ(指の運動、温熱療法・温冷浴など)、内服薬(消炎鎮痛薬、鎮痛薬など)、外用薬、注射(ステロイド注射など)、手術(関節固定術)という選択肢があります。通常は消炎鎮痛薬の内服と指の運動から始めていき、効果を見ながら他の治療を考えていきます。テーピングや装具はそれによる指の関節の適度な圧迫が痛みに有効と考えられており、その背景には関節の周りに異常な血管が増えていてそれが痛みに関係しているという説があります。

 「痛いときはまず安静にしてください」というのが医療者の常套句ですが、指だけを安静にするというのは現実的にはなかなか難しく、身の回りのことや仕事に大きな影響が出てしまいますので、症状がそれほど強くないうちに治療を考えることが大切です。

 なお、当院ではヘバーデン結節に対して動注治療という治療を行っております。詳しくはこちらをご覧ください。

ヘバーデン結節の漢方治療は?

 ヘバーデン結節は指の関節に起こった「変形性関節症」「関節痛」です。関節痛に適応のある漢方薬には「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」「桂芍知母湯(けいしゃくちもとう)」「五積散(ごしゃくさん)」「芍薬甘草附子湯(しゃくやくかんぞうぶしとう)」「疎経活血湯(そけいかっけつとう)」「大防風湯(だいぼうふうとう)」「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」「麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)」「薏苡仁湯(よくいにんとう)」がありますが、このうち指の関節痛には「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」が一般的に用いられます。市販薬としてドラッグストア等でも販売されていますので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

 まだ痛みや動かしにくさがそれほど強くない段階なら、漢方治療だけで治療を行ってみることもできます。また、他の治療と漢方治療を併用することもできます。

 その他、ヘバーデン結節に対して経験的に使われてきた漢方薬もありますので、体質に合わせて併用することがあります。