足底腱膜炎

足底腱膜炎って?

 足底腱膜という、足のうらにある腱に炎症が起こって痛みが出る疾患です。足底腱膜は足の指の骨と踵の骨を足のうらからつないでいる腱ですが、足のうらのうち、かかとの前方・内側のあたりに痛みが出ることが多いです。

 歩いたり運動をしたりするときには足のうらで地面からの衝撃を吸収しますが、その時に足底腱膜は重要な役割をはたしています。長時間立ち歩いたり、ジャンプを繰り返したり、靴が合わなかったり等の理由で足底腱膜に負担がかかると、足底腱膜に小さな傷がついてしまいます。多少の傷なら安静で回復しますが、回復するまえに繰り返し小さな傷ができてしまうと痛みが続いてしまいます。

 足底腱膜炎になりやすい人の特徴として、足首が固く反らせにくい(しゃがんだときにかかとが浮く)、長時間の立ち仕事をしている、肥満がある、ということが挙げられます。

足のうらが痛いです・・・足底腱膜炎ですか?

 足底腱膜炎のセルフチェック方法をご紹介します。①踵の内側を押すと痛い、②足のうらをストレッチすると痛い、③歩き始めが痛い、の3つが当てはまると足底腱膜炎の可能性が高いといえます。

 足のうらの痛みが出る疾患はいろいろあります。足底腱膜炎の場合は「朝起きて一歩目が痛い」というのが特徴的な症状といわれていますが、いったん痛みが和らいだあとも長時間立ったり歩いたりしているとだんだん痛くなるという症状が出ることも多いです。診察上は、足のうらのかかとの骨の内側付近に圧痛があり、エコーで足底腱膜を見てみると正常よりも分厚くなっていたり、レントゲンでかかとの骨にトゲができていたりすることがあります。最近ではエコーの有用性が報告されています。正常な方の9割以上は足底腱膜の厚さが4㎜以下とされていますので、それ以上の厚さになっている場合は足底腱膜に異常が起こっている可能性が高いと考えられます。

 他に足のうらの痛みが出る疾患として、足根管症候群(そっこんかんしょうこうぐん)があります。内くるぶしの近く(足根管)には足のうらの感覚を担当している神経が走っていて、そこで神経が障害を受けると足のうら全体の痛みが出ます。その場合は内くるぶしの近くを押したり軽く叩いたりすると、足のうらに痛みが響くことが多いです。

 その他に足底腱膜炎と似た症状を起こす疾患は、踵部脂肪体炎(かかとの打撲、かかと中心または縁の痛み、硬い地面を歩いたり体重をかけたりすると痛い)、後脛骨筋腱機能不全(内くるぶしが腫れる、扁平足)、頻度が多くないものではReiter症候群(アキレス腱炎や関節炎を合併)などがあります。

足底腱膜炎の治療は?

 大きく分けて、①お薬、②ストレッチ、③履き物の調整、④注射、の4つがあります。

 ①は痛み止めの内服や湿布を使って、症状の緩和を試みます。ただし、あくまでも対症的な治療になりますので、他の治療を組み合わせていきます。

 ②に関して、足底腱膜炎の方はアキレス腱やふくらはぎの筋肉も固くなっている場合が多いです。アキレス腱やふくらはぎのストレッチやマッサージをしばらく続けていると、足底腱膜炎の痛みも改善してくることがあります。他、足の指を動かす、ボールで足のうらをマッサージする、等も行ってみると症状を緩和できる可能性があります。

 ③ですが、履いて歩くだけで足底腱膜に負担がかかるような靴(ハイヒールなど)はなるべく控えていただき、普通の靴でも痛みが出てしまう場合は足底板という中敷き(インソール)を装着するとよい場合があります。

 ④ですが、炎症を起こしている足底腱膜自体に局所麻酔薬と炎症止めを注射する方法や、腓腹筋~ヒラメ筋にハイドロリリースをする方法などがあります。足底腱膜への注射は痛みが強いですが、しばらくの間は痛みを抑えることができますので、急に痛みが悪化したとき等に症状を緩和する目的で行ってみてもよいと考えられます。ただし、組織の萎縮などの副作用もあるため、何度も繰り返して行うことはおすすめできません。また近年、足底腱膜に炎症を繰り返すことで異常な血管が増えてしまい、痛みの原因となっている場合があることがわかってきて、その異常な血管に対する治療(動注治療)を行うことで痛みの改善を図る方法も行われています。

足底腱膜炎の漢方治療は?

 「足底腱膜炎」に適応のある漢方薬は残念ながらありません。筋肉痛に適応のある漢方薬のうち足底腱膜炎に有効という報告があるものがいくつかありますので、他の治療と組み合わせて試してみることがあります。生薬では、「ヨクイニン(ハトムギの皮をのぞいたもの)」という生薬(を含む漢方薬)が有効な可能性があるという報告があります。